この記事で分かること
- 展示会動画がブース集客で果たす3つの役割と、Web用動画をそのまま流用してはいけない理由
- ティザー/サービス紹介/会社紹介/ループなど動画の種類ごとの最適な尺の決め方
- 無音対応テロップ、ループ設計、縦型サイネージ、マルチ画面など会場で効く制作のコツ
- 展示会動画の費用を左右する要素と、生成AIで短納期・多パターン化する方法
- 5面デジタルサイネージ演出映像の制作事例
- 会期から逆算した制作スケジュールと、失敗しない制作会社の選び方
展示会は、限られた会期のあいだに大量の来場者が通路を流れていく特殊な場です。
ブースの前を通り過ぎる時間は数秒。
その数秒で「何の会社か」「自分に関係があるか」を伝えきれなければ、どれだけ良い製品でも素通りされます。
その数秒を担うのが展示会動画です。
この記事では、展示会動画の役割と種類、会場で本当に効く制作のコツ、費用の考え方、制作会社の選び方までを整理しました。
初めて出展する方も、毎年出展していて成果が頭打ちの方も、そのまま制作要件に落とせる内容にしています。
目次
展示会動画とは?ブース集客で果たす役割

展示会動画とは、展示会・見本市のブースで流す映像コンテンツの総称です。
大型モニター、縦型サイネージ、LEDビジョン、卓上タブレットなど、設置される機材はさまざまですが、果たす役割は大きく3つに整理できます。
1. 通路から足を止めさせる(アイキャッチ)
遠くからでも動きと色で目に留まり、「何を扱う会社か」を一瞬で伝えます。
ブース集客の入口を担う役割です。
2. 説明員が話しかけるまでの時間をつなぐ
来場者がブース内に入っても、説明員が全員に即対応できるとは限りません。
その待ち時間に一次情報を届け、離脱を防ぎます。
3. 説明の一部を代行し、均質化する
説明員によって話す内容や熱量にばらつきが出るのは避けられません。
核となる説明を映像に固定しておくことで、誰が対応しても最低限の情報が伝わります。人員が限られる出展ほど効果が大きい部分です。
重要なのは、展示会が「音が聞こえにくく」「立ち止まる時間が短く」「視線の高さに人がいる」という、Webサイトや商談室とはまったく違う環境だということです。
同じ動画を流用しても機能しないのは、この環境差を設計に織り込んでいないためです。
展示会動画のメリットと効果

遠距離から情報が伝わる
パネルやポスターは近づかないと読めませんが、動画は動きがあるぶん遠距離からの視認性で優位に立ちます。
通路の反対側からでも認識されることが、ブース集客の第一歩になります。
商談の質が上がる
映像で前提知識を得た来場者は、説明員との会話がゼロからのスタートになりません。
「もう概要はわかったので、うちのケースだとどうなりますか」から始まる会話は、そのまま商談化の確度に直結します。
説明工数の削減
会期中、同じ説明を一日に何十回も繰り返すのは大きな負担です。
基礎説明を映像に任せることで、説明員は個別の質問対応に集中できます。
会期後も資産として使える
展示会動画は、会期が終われば役目を終えるものではありません。
Webサイトのトップページ、営業資料への埋め込み、SNS、採用説明会など、二次利用の余地が広く残ります。制作時点から「会期後にどこで使うか」を決めておくと、投資対効果は大きく変わります。
動画の種類と最適な尺

展示会動画は、置く場所と目的によって適した形式・尺が変わります。
1本で全部を賄おうとせず、役割ごとに分けるのが基本です。
| 種類 | 目安の尺 | 主な設置場所 | 目的 |
|---|---|---|---|
| ティザー/ループ映像 | 15〜30秒 | 通路側の大型モニター・縦型サイネージ | 足を止めさせる |
| サービス・製品紹介 | 60〜90秒 | ブース中央・デモスペース | 何ができるかを理解させる |
| 会社紹介 | 60〜90秒 | 商談スペース・受付付近 | 信頼感を持たせる |
| デモ・操作説明 | 30〜60秒 | 卓上タブレット・製品横 | 実際の使用イメージを持たせる |
| 導入事例・インタビュー | 60〜120秒 | 商談スペース | 検討の後押しをする |
尺の決め方は「視聴が始まる位置」で決まる
- 通路を歩いている人:認識に使える時間は数秒。1メッセージだけを大きく置く
- 足を止めた人:滞在は30秒前後。ここで用途とベネフィットを伝えきる
- 着席した人:90秒前後まで許容される。ここで初めて詳細や事例を出す
「せっかく作るから」と1本に全部を詰め込むと、通路の人には長すぎ、着席した人には浅すぎる中途半端な尺になります。
30秒と90秒の2本立てが、多くの出展でもっとも扱いやすい構成です。
会場で効く制作のコツ

ここが展示会動画のいちばんの肝です。Web用の動画をそのまま持ち込むと機能しない理由も、この4点に集約されます。
1. 無音前提でテロップを設計する
会場はアナウンス、他社ブースの音、来場者の話し声で常時騒がしく、ナレーションはまず聞こえないと考えるべきです。
そのうえで、
- ナレーションに頼らず、テロップだけで意味が通る構成にする
- 1画面1メッセージ。読ませる文字数は絞る
- 文字は「想定より2段階大きく」。数メートル離れた通路から読める前提で組む
- 背景と文字のコントラストを強く取る(会場照明は明るく、淡い配色は沈みます)
音を使う場合は、指向性スピーカーの利用や、主催者側の音量レギュレーションの事前確認が必要です。
2. ループを前提に設計する
展示会動画は、会期中ずっと繰り返し再生されます。
ループ設計を怠ると、いかにも「巻き戻った」印象になり、通路の人の視線が切れます。
- 冒頭とラストの絵をつなげる(同系統のカット・色にして継ぎ目を目立たせない)
- タイトルやロゴカットを区切りに置き、どこから見始めても意味がわかるようにする
- 数分でひと回りする長さにまとめ、来場者が同じ映像を何度も目にしても飽きない密度にする
- 複数パターンを用意して順に流すと、同じ場所に長く滞在する来場者にも新鮮さを保てます
3. 縦型サイネージへの対応
近年は縦型サイネージの採用が増えています。
横型映像を縦画面に流し込むと上下に余白が出て、視認性が大きく落ちます。
- 縦型は9:16で作り切るのが基本
- 画面の下1/3は人の頭で隠れる前提で、重要な情報は上2/3に置く
- 設置高さを事前に確認する(低い位置に置くと通路から見えません)
制作費用の考え方

展示会動画の費用は、一律の相場で語れるものではありません。
同じ「1分の動画」でも、要件によって必要な工数はまったく変わるためです。
金額を比較する前に、何が費用を動かしているのかを把握しておくと、見積もりの妥当性を判断できます。
費用を左右する主な要素
- 尺と本数:30秒1本と、30秒+90秒+縦型の3本立てでは工数が変わります
- 実写撮影の有無:撮影日数、ロケ地、出演者、機材が費用を大きく左右します
- 既存素材の有無:使える製品写真・図面・過去映像があるほど、制作は軽くなります
- バリエーション数:横型/縦型、多言語版、尺違いなど、派生の数
- アニメーション・CGの比重:3Dモデリングを伴う製品表現は工数が増えます
- ナレーション・字幕の言語数
費用を抑えるための現実的な打ち手
もっとも効くのはワンソース・マルチユースの設計です。
展示会用に作ったカットを、Webサイト、営業資料、SNS用の短尺に展開できる形で撮っておく(作っておく)だけで、1本あたりの実質コストは下がります。
生成AIで短納期・多パターン化する

生成AIによる映像制作は、展示会動画が抱えやすい課題と噛み合う部分が多くあります。
1. 撮影を伴わないため、制作期間を圧縮できる。
会期直前の駆け込みにも対応しやすくなります
2. 横型/縦型、日本語/英語、30秒/90秒といった派生を短期間で量産できる。
従来は「予算的に1パターンだけ」となっていた部分をカバーできます
3. 修正・差し替えに強い。
展示内容や訴求メッセージが直前に変わっても、該当箇所だけ作り直せます
撮影が困難な被写体(大型設備、開発中の製品、未来のシーン)も映像化できます
一方で、実写でしか出せない質感や、実在する現場の空気感が必要な場面もあります。
すべてをAIで置き換えるのではなく、実写とAIを目的別に使い分けるのが、費用と品質のバランスが取れる進め方です。
展示会動画は会期後も使える|SNS・Webサイトへの二次利用
展示会の会期は、長くても数日です。
そのために制作した映像を会期終了とともにお蔵入りさせてしまうのは、あまりにもったいない使い方です。
展示会動画は、そのまま、あるいは少しの加工で他の媒体に転用できます。
「展示会用の予算」で作った1本を、通年で使える映像資産に変えられるかどうかで、投資対効果は大きく変わります。
主な転用先
| 転用先 | 使い方 | 必要な加工 |
|---|---|---|
| 自社Webサイト | トップページのメインビジュアル、サービス紹介ページへの埋め込み | ほぼそのまま/尺の調整 |
| SNS(X・Instagram・LinkedIn・YouTube) | 出展告知、会期中のリアルタイム投稿、会期後のレポート投稿 | 縦型・正方形へのリサイズ、短尺化 |
| 営業資料・商談 | 訪問時のタブレット再生、オンライン商談での画面共有 | ほぼそのまま |
| 会期後のフォローメール | 名刺交換した相手への御礼メールに動画リンクを添える | ほぼそのまま |
| 採用活動 | 会社説明会、採用サイトでの事業紹介 | 訴求ポイントの差し替え |
| 受付・店頭サイネージ | 自社オフィスやショールームでの常設再生 | ループ設計はそのまま流用可 |
とくに相性が良いのがSNSでの出展告知です。
会期前に「このブースでこの映像が見られます」と発信しておくと、来場者が事前にブースを認識した状態で会場に来るため、当日の集客につながります。
展示会動画は、会場に着いてから初めて機能するものではありません。
転用しやすくするための3つの設計
作ってから「他でも使いたい」と考えると、結局作り直しになります。
制作前に決めておくだけで、追加コストをほとんどかけずに展開できます。
1. 縦型・横型の両方を想定して構図を組む
横型で作ったものを縦型に切り出すことを見越し、重要な要素を画面中央寄りに配置しておきます。
これだけでSNS転用のリサイズが格段に楽になります。
2. テロップ焼き込み版と、非焼き込み版を分けて納品してもらう
展示会用は無音前提でテロップが必須ですが、Web用にはナレーション版のほうが適していることもあります。
テロップを焼き込んでいない映像データがあれば、後から自由に組み替えられます。
3. 尺違いのバージョンをあらかじめ用意しておく
本編90秒に加えて、SNS用の15〜30秒版を同時に作っておく。
ゼロから作るより、はるかに低いコストで済みます。
契約時に「二次利用の範囲」を必ず確認する
転用でもっとも多いトラブルが、権利面の確認漏れです。
- 出演者がいる場合、肖像の使用範囲(展示会限定か、Web公開まで含むか)
- BGM・効果音のライセンス範囲(利用媒体・期間の制限がないか)
- 購入素材やストック映像の利用許諾条件
- 元データ(編集プロジェクトファイル)の納品可否
「展示会での上映のみ」という条件で契約していると、Webに載せた瞬間に契約違反になります。
制作を依頼する時点で、想定される転用先をすべて伝えておくのが確実です。
後から範囲を広げると、追加のライセンス費用が発生することもあります。
【参考】サイネージ表現の可能性を探る|5面デジタルサイネージ演出映像
弊社は国際見本市「インテリア ライフスタイル2026」の出展ブースに設置された、5面デジタルサイネージ向けの演出映像を制作しました。
一般的な1画面のモニターとは異なり、5つの画面が構成する空間そのものを演出の対象とした案件です。
画面を横断していく映像表現によって、面と面のあいだのつながりを感じさせ、ブース全体に立体感と没入感を持たせています。
「1本の映像が空間全体で動いている」状態をつくることで、単体のモニターでは出せない引きの強さを狙いました。
設置環境が特殊なぶん、既存映像の流用や汎用テンプレートでは成立しません。
サイネージの構成に合わせたオリジナル映像を、限られた期間で構築した点が、この案件の要になっています。
生成AIを制作の軸に据えることで、撮影を伴わずにこの規模の演出映像を会期に間に合わせることができました。
▶ 制作実績を見る:【インテリア ライフスタイル2026】5面デジタルサイネージ演出映像
会期から逆算するスケジュール

展示会動画でもっとも多いトラブルは「間に合わない」です。
会期は絶対に動かせないため、逆算での進行管理が欠かせません。
- 会期の2〜3か月前:出展コンセプトと訴求メッセージの決定、制作会社の選定
- 2か月前:構成案・絵コンテの確定、会場機材スペックの確認
- 1か月前:初稿の確認、修正
- 2週間前:最終データ納品、再生機材での実機テスト
- 前日:ブース設営時に現地で最終確認
特に見落とされがちなのが実機テストです。
手元のPCで問題なく再生できても、会場の機材では色味が変わったり、コーデック非対応で再生できなかったりします。必ず余裕を持って確認してください。
制作期間の全体像については、映像制作の納期ガイドもあわせてご覧ください。
制作会社の選び方

展示会動画は、Webサイトに載せるような一般的な企業紹介動画とは求められる設計が異なります。
以下の観点でチェックしてください。
- 展示会という場を理解しているか:無音対応、ループ設計、縦型対応の実績があるか
- 会場スペックの確認を先に行うか:解像度やコーデックの確認をせずに制作を始める会社は要注意です
- 会期から逆算した進行を提示できるか:修正回数と締切が明示されているか
- バリエーション展開に対応できるか:横型/縦型、多言語、尺違いをどこまで含められるか
- 二次利用の権利範囲が明確か:会期後にWebやSNSで使えるか、素材の使用許諾はどこまでか
- 直前の変更に対応できる体制か:展示内容は直前まで動きます
見積もりを比較する際は、金額だけでなく「何本・何パターン・修正何回まで含むか」を必ず揃えて比較してください。
安く見える見積もりが、派生パターンや修正を別費用として積み上げる構成になっているケースは少なくありません。
まとめ

展示会動画は、「作ること」より「会場で機能させること」が難しいコンテンツです。押さえるべきポイントを改めて整理します。
- 役割は足を止めさせる・時間をつなぐ・説明を均質化するの3つ
- 通路向けの短尺ループと、ブース内向けの中尺を役割で分ける
- 無音前提のテロップ設計とループ設計が成否を分ける
- 縦型サイネージは9:16で作り切り、重要情報は画面の上2/3に置く
- 費用は尺・撮影の有無・バリエーション数で変動する。要件を揃えて比較する
- 会場機材のスペック確認と実機テストを必ず工程に入れる
よくある質問(Q&A)

Q1. 展示会動画の尺はどのくらいが適切ですか?
A. 通路向けのループ映像は15〜30秒、ブース内での説明用は60〜90秒が目安です。
役割ごとに分けて用意するのが効果的です。
Q2. ナレーションは入れたほうがいいですか?
A. 会場では聞こえないことが多いため、ナレーションなしでも成立する構成が前提です。
そのうえで、会期後のWeb利用を見据えてナレーション版を別途用意する方法もあります。
Q3. 会期直前ですが間に合いますか?
A.要件次第です。
生成AIを活用した制作では撮影工程が不要なため、従来より短い期間での対応が可能です。
まずは会期日程と必要な尺をお知らせください。
Q4. 既存の会社紹介動画を流用できますか?
A. そのままではおすすめしません。
無音・ループ・視認距離の条件が異なるため、最低限テロップと尺の再編集は必要です。
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弘田 朗(ひろた たから)
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