AI動画をつくったことのある人なら、誰もが同じ袋小路を知っている。

プロンプトを書く。
生成する。
思っていたのと違う。
書き直す。
また生成する。

そうしているうちにクレジットが尽きている。

シンガポール発のAI動画生成プラットフォーム「TOPVIEW」は、この繰り返しそのものをなくそうとしている。
2026年に立て続けに投入された「Canvas」と「Film Studio」は、どちらも生成する前にショットを組み立てるという発想でつくられている。
Film Studioの発表時に掲げられたコピーが、同社の現在地をよく表している。

“Stop prompting clips. Start directing shots.”
──クリップを生成するのはやめて、ショットを演出しよう。

同社は2026年2月に日本法人「TOPVIEW JAPAN株式会社」を設立し、日本市場での展開を本格化させている。
設立時、代表取締役の呉垠(Gin)氏はこうコメントを出している。

「AI動画生成は、もう実験段階ではありません。EC・ライブコマース・広告・ショートドラマと、あらゆる場面でビジネスに直結する技術になりました。海外のコマース現場で長く働いてきた私自身、動画制作のコストや言語の壁に何度も悩んできました。その課題がAIで解決できると確信したとき、これを日本に届けなければと思いました」 (2026年4月3日 プレスリリースより)

生成AIによる映像制作を専門とする私たちスムージースタジオにとって、この動きは他人事ではない。
「演出できるAI映像」とは何を指すのか。
そして、その先に制作会社の居場所はあるのか。同社日本法人の代表取締役・呉垠(Gin)氏に話を聞いた。

聞き手について 本記事は、株式会社スムージースタジオ(生成AI専門の映像制作会社)のリードエンジニア・弘田朗が、TOPVIEW JAPAN 代表取締役・呉垠(Gin)氏に行ったインタビューを再構成したものです。製品仕様・料金・対応モデル等は2026年8月時点の情報であり、最新の状況は公式サイト(topview.ai)をご確認ください。

目次
  1. プロンプトだけに、演出のすべてを背負わせない
  2. Canvas──AI エージェントと組み立てる無限キャンバス
  3. Film Studio──監督が現場で決めることを、生成の前に決める
  4. モデルは、いずれ横並びになる
  5. ショートドラマという実験場
  6. 使っているのは、どんな人たちか
  7. 日本市場の壁。権利とAIっぽさ
  8. 制作会社の仕事はどう変わるのか
  9. まとめ:TOPVIEWとは何か

プロンプトだけに、演出のすべてを背負わせない

――TOPVIEWがいま解こうとしている課題は、どこにありますか。

いちばんの問題は、プロンプトという入力欄ひとつに、映像制作の判断が全部押し込まれていることだと思っています。

撮影の現場を思い浮かべてみてください。監督はカメラの位置を決めて、レンズを選んで、役者に「そこは抑えて」「視線は少し下」と指示を出す。照明を直して、最後に色を整える。ひとつひとつ別の判断ですよね。ところがAIで動画をつくるときは、それを全部一本の文章に詰め込んで、あとは祈るしかない。

そうすると何が起きるか。気に入らなければ、全部やり直しになるんです。カメラだけ寄せたいのに、芝居も光も人物も丸ごと変わってしまう。それでクレジットが溶けていく。

私たちがやりたいのは、この構造をほどくことです。

――その構造を、どうやってほどいたのですか。

作品全体を考える場所と、一カットを詰める場所を、分けました。

全体を組み立てるのがCanvas。一カットの演出を詰めるのがFilm Studio。それから、エピソードが続くショートドラマ専用にDrama Studioというものもあります。

そもそも私たちは、コマースや EC の商品動画をつくる用途で使っていただくところから始まった会社です。そこから機能とモデルが進化していくなかで、映画やドラマをつくりたいというお客様が増えてきた。Film Studio や Drama Studio は、その変化に応えるかたちで生まれています。

同じ「動画をつくる」と言っても、頭の使い方はまったく違うんです。話の流れを設計しているときと、この一カットの芝居をどうするか悩んでいるときとでは、見ているものが別物ですよね。それを同じ画面で同時にやらせるから無理が出る。だから分けました。

Canvas──AI エージェントと組み立てる無限キャンバス

――Canvasはどういうものですか。

ひとことで言えば、AI エージェントと会話しながら作品を組み立てていく無限キャンバスです。作品の構造は、シーンとカット──つまり絵コンテの単位で持っています。ムードボード、シーンのリスト、参考画像、生成したカット、その別バージョン。制作で扱うものを全部ひとつの画面に置いて、目で見ながら組み立てていきます。

大事なのは順番です。先に設計して、後から生成する。プロンプトを打って出てきたものを見てから考えるんじゃなくて、構成とビジュアルの方向を先に決めて、必要なカットだけ生成する。

――キャンバス型のツールは他社にもあります。他社との思想の違いはどこにありますか。

他社のキャンバス型のノードベースのツールは、処理の流れを組み立てる思想ですよね。エンジニアリング的で、複雑な作業を自動化したい人にはとても強い。

私たちのCanvasもノードでつなげられます。そこはまったく別物というわけではありません。違うのは、入口をどこに置いているかだと思っています。

Topview は AI エージェントとの対話から入ります。「こういう話をつくりたい」と伝えると、ストーリーがあって、シーンがあって、カットがある、という構造をエージェントが一緒に立ち上げてくれる。つなぎ方の設計は、必要な人がやればいい。パイプラインを組むことが目的の人と、作品をつくることが目的の人とでは、最初に開く画面が違っていいはずなんです。

優劣の話ではないと思っています。手元にあるのが仕様書なのか、脚本なのか。その違いですね。

Film Studio──監督が現場で決めることを、生成の前に決める

――2026年7月に出たFilm Studioについて教えてください。

映画をつくるためのモードです。プロフェッショナルの制作現場を想定しています。

Film Studioのトップ画面。演出に関わる機能とSkillが並ぶ。

役者の表情、カメラの設定、カメラワーク、色。演出に関わる判断を、それぞれ独立して触れるようにしてあります。あとはSkillといって、演出の型をまとめたものも用意しています。カメラワークをまとめたもの、撮影技法を体系化したもの。かなりの数があって、いまも増え続けています。

――なぜここまで分けたのでしょう。

全部、監督が現場で下している判断だからです。

現場だったら「照明はそのままで、カメラだけ半歩寄って」で通じますよね。プロンプト一本ではそれができない。カメラを変えたいだけなのに、全部が変わってしまう。

分けておけば、気に入らない結果が「やり直し」ではなく「調整」で済みます。使ってみるとわかるんですが、これは体感がかなり違います。

――ポートレート強化というのは、AIっぽさを消す機能ということですか。

そうです。生成した人物の顔は、どうしても肌が滑らかになりすぎたり、質感が均一になりすぎたりする。あの仕上がりすぎた感じで、視聴者は一瞬でAIだと気づくんですよね。

これを機能として明示的に持っているのは、AIっぽさは放っておいていい欠点ではない、という私たちの立場の表明でもあります。

Film Studioの紹介動画「Topview Film Studio: Stop Prompting Clips. Start Directing Shots.」

――「Stop prompting clips. Start directing shots.」というコピーは、かなり踏み込んだ言い方だと感じました。

意識してそう書きました。

AIは美しいクリップをつくれます。それはもう証明されている。でも、美しいクリップが並んでいるだけでは映画にならない。そこには意図と判断と、その積み重ねが要ります。

私たちが目指しているのは、生成の精度を上げること自体ではなくて、演出という行為をAI映像のなかに取り戻すことなんです。

――3Dショットコンポーザーという機能が印象的でした。

これは手応えを感じている機能です。人物や小道具を3D空間に置いて、仮想カメラの位置と画角を決める。その構図をガイドにして映像を生成します。

やっていることはプリビズです。実写の現場でやることを、生成の前に持ってきた。

何がいいかというと、同じシーンを複数のアングルで撮れることなんです。ワイド、寄り、逆から。3Dで組んだ空間は変わらないので、カットをまたいでも空間がねじれない。AI映像でいちばん先にバレるのは、実は人物の顔じゃなくて空間の破綻なんですよ。

3D Shot Composerの操作画面。男性・女性・子供のモデルを配置し、それぞれにタグを付けて管理する。カメラは複数登録でき、画角は16:9などから選択できる。

――実際に試してみました。3Dで人物を配置したものを起点に、実写に起こして、背景を足すところまで一本の流れでつながりますね。

そうです。3Dの段階では、まだ誰でもない人形です。そこで決めているのは、誰がどこに立って、どちらを向いて、カメラがどこから見ているか。それだけです。

その構図を持ったまま生成に進むと、人物の芝居も奥行きも、最初に決めた通りに出てくる。

同じCanvas上で、3Dでの構図決めから実写化、背景の追加までが一続きになる。上から順に、3Dディレクターステージ、配置した3Dモデル、そこから生成した実写カット、背景を追加して仕上げたもの。

――AI映像で最初に破綻するのは、やはり空間なのでしょうか。

そう思います。いちばん先にバレるのは、実は人物の顔じゃなくて空間なんですよ。さっきまで右にあった窓が左にある。観ている人は理由がわからないまま、違和感だけを持つ。

顔の精度はモデルが上げてくれます。でも空間の一貫性は、モデルに任せていても揃わない。だから人間が決めるための場所を用意した、ということです。

モデルは、いずれ横並びになる

――自社で基盤モデルを開発するという選択肢もあったと思います。なぜそうしなかったのですか。

そもそも、解こうとしている問題が違うんです。

モデルの性能は、世界中の優秀なチームが競い合って引き上げてくれています。そこに私たちがもう一社加わったところで、業界にとって新しいことは何も起きません。

一方で、出てきた映像を作品として仕上げるところは、ほとんど誰も手をつけていませんでした。プロの現場が何に困っているのかを知っていて、それをかたちにできる。そういう人間は、実はそう多くないんです。私たちはそこをやると決めました。

モデルは絵の具だと思っています。絵の具をつくる会社と、絵を描く環境をつくる会社では、役割が違う。どちらが上という話ではなくて、両方なければ絵は描けません。

――とはいえ、いまはモデルの性能そのものが競争になっています。

いまは、ですね。

ただ、この競争はいずれ落ち着くと見ています。半年前なら驚かれていた品質が、もう当たり前になっている。それが何度も繰り返されて、どのモデルを使ってもきれいな映像が出るところまで来る。

そのとき、何で選ばれるのか。私たちが見ているのはそこです。

――何で選ばれると考えていますか。

思った通りに出せるかどうかです。

きれいな映像が出ることと、思った通りの映像が出ることは、まったく別の話なんですよ。プロの現場で問題になるのはいつも後者です。クライアントに「ここをこう直したい」と言われて直せなければ、どれだけきれいでも仕事になりません。

モデルが横並びになるほど、その差が効いてきます。CanvasもFilm Studioも、モデルが良くなればなるほど価値が上がる設計にしてあるのはそのためです。

――一方で、モデルが賢くなれば、細かく指定する必要自体がなくなるという見方もあります。ツール側の価値はむしろ下がるのでは。

その可能性は否定しません。実際、数年前は必要だった作業がもう要らなくなっている。

ただ、指示が要らなくなるのと、判断が要らなくなるのは違うと思っています。

どれだけ賢いモデルでも、「この作品で何を伝えたいか」は決められません。誰に向けて、どのトーンで、どこで感情を動かすのか。それは人間が決めることです。むしろモデルが賢くなるほど、判断だけが残っていく。

私たちがつくっているのは、その判断を置く場所です。だから当面は仕事がなくならないだろう、と思っています。

――モデルの提供元への依存はリスクにもなりませんか。

だからこそ、最初からマルチモデル構成を前提にしています。複数を並行して載せているのは、選択肢を持っていること自体が安全弁になるからです。

運用としても、新しいモデルが出たらできるだけ早く載せる、というのを社内のルールにしています。基盤モデルを自分たちでつくらないと決めた以上、最新のものを最短で実務に使える形にすることが、私たちの提供価値そのものなので。

ユーザー側から見ても、最適なモデルは用途で変わります。ラフを速く回したいときと、本番のカットを仕上げるときでは選ぶものが違う。その選択がひとつの画面のなかで完結すること。そこに価値があると思っています。

ショートドラマという実験場

――Drama Studioでショートドラマにも取り組まれています。

小説や脚本、あらすじから、人物もシーンもビジュアルも音も一貫させて縦型のドラマをつくる環境です。

最初にアートスタイルを選びます。実写風にするのかアニメーションにするのか。そこから、一話完結なのか連続ものなのか、比率は9:16か、一話目を何秒にして二話目以降を何秒にするか。そういう設定を先に決めてから、脚本づくりに入ります。

Drama Studioの企画設定画面。アートスタイル、エピソードモード、比率、各話の尺、言語などを設定したうえで、AIライティングアシスタントと対話しながらエピソードのアウトラインを組み立てていく。

――「フックチェーン」という項目が目を引きます。

ショートドラマは、最初の数秒で離脱されたら終わりです。そして各話の終わりで「次を見たい」と思わせられなければ、そこで切れる。

そのフックが作品全体でどうつながっているかを、一覧で見られるようにしたのがフックチェーンです。一話ずつ書いていると、どうしても目の前のシーンに集中してしまって、全体の引きの設計が崩れる。それを俯瞰できるようにしています。

登場人物、舞台、小道具もプロジェクトとして持たせています。話数が増えても同じ人物、同じ部屋を保つためです。

――そもそも、なぜショートドラマなのでしょうか。

実は私たち、社内に制作スタジオを持っているんです。ヒット作を手がけてきた脚本家と監督のチームがいて、AI と組みながら企画から配信、商業化まで一貫してやっている。すでに公開している作品が中国のショートドラマの主要プラットフォームであるDouyin(中国版Tiktok)で 1 位をとって、累計再生数は 1 億回を超えました。

ショートドラマが面白いのは、AI映像にとっていちばん難しい条件が揃っていることなんですよ。同じ人物が何十カットも出てきて、同じ部屋に何度も戻ってくる。一カットだけ綺麗でも成立しない。

なので私たちにとってのショートドラマは、事業であると同時に検証の場でもあります。CanvasやFilm Studioの機能の多くは、自分たちでドラマをつくっていて「これがないと無理だ」と気づいたものなんです。

――日本のショートドラマ市場はどう見ていますか。

正直、まだこれからだと思います。ただ、日本には世界に通用するストーリーテリングの蓄積がある。制作費がネックで通らなかった企画が実現できるようになる。そこに大きな余地を感じています。

海外では、Tiktokに3話だけ出して反応を見てから長編化を判断する、という使われ方も始まっています。IPを検証するコストが劇的に下がるわけです。これは日本の出版社さんや制作会社さんにこそ向いている使い方だと思っています。

使っているのは、どんな人たちか

――主なユーザーは個人と法人、どちらですか。

両方です。TiktokやYouTubeで発信している個人のクリエイター、ECの事業者、広告代理店、そして映像制作会社。世界で500万人を超える方に使っていただいています。

比率で言えば個人のほうが多いのですが、CanvasとFilm Studioを出してから、チームで使う法人のお客様が明らかに増えました。ひとりで完結させる道具から、複数人で作品をつくる環境に変わってきている実感があります。

つくられるものも変わってきました。もともとは EC やライブコマースの事業者さんが中心で、商品を売るための動画、という使われ方が大半だったんです。それが、機能とモデルが進化するにつれて、映画やドラマをつくりたいという方が明らかに増えてきた。同じプラットフォームなのに、出てくるものがまったく変わってきている。この変化は、私たち自身が予想していたより速いです。

――ユーザーの声はどうやって拾っているのですか。

コミュニティとイベントです。オンラインでも常にやりとりしていますし、オフラインの場もつくっています。ロサンゼルスではCineGenという名前で、フィルムメイカーやクリエイターに集まってもらって実際に手を動かす会をやっていて、前回は140人以上が来てくれました。Seedanceの使い方を扱ったマスタークラスもやりました。

なぜわざわざオフラインなのかというと、このカテゴリはまだ使い方が確立していないからです。ツールを配っただけでは何も起きない。誰かが実際に作って見せて、それを真似する人が出て、はじめて広がる。その最初の一周をつくるには、人が集まる場所が要ります。

そこで出てくる「この操作がやりにくい」「こういうことができないか」という声が、そのまま開発の優先順位に入ってきます。正直に言うと、私たちのようなサイズの会社にとっては、それが一番速いんです。全部を自分たちで考えるより、使っている人の声を聞いたほうが早い。

――日本ではいかがですか。

日本でも、これからオフラインのイベントをやっていきます。ここは本気で力を入れるつもりです。

今年の秋以降は、業界イベントへの出展や登壇、パートナー企業との共催イベントも予定しています。まずは実際に触っていただける場を、継続的につくっていきます。

日本に来て感じたのは、みなさん想像以上に真面目に検証されるということです。「使ってみました、すごいですね」で終わらない。「ここはこう作りたいのに、こうならない」という具体的な話が出てくる。そういう指摘は、正直こちらとしてはありがたいんです。

オンラインだと、その手前で会話が終わってしまうことが多い。実際に画面を並べて、その場で「じゃあこうしてみましょうか」とやってみる。そこではじめて本当の課題が見えてきます。

日本のクリエイターや制作会社のみなさんと、そういう場を継続的につくっていきたいと思っています。

日本市場の壁。権利とAIっぽさ

――日本法人まで設立して、日本市場に力を入れられています。TOPVIEWにとって日本はどういう市場ですか。

品質の基準になる市場だと思っています。

日本はアニメもゲームも広告もドラマも、世界に影響を与えてきた国です。そのぶん、映像に対する目が厳しい。日本のプロが「これは使える」と言ってくれるものなら、世界のどこでも通用するはずなんです。

もうひとつは、日本にはAIを作品のレベルまで持っていける制作力があること。素材をつくるだけならどこの国でもできますが、それを一本の作品として成立させるとなると話が違う。そこができる人たちがいる国は、実はそう多くありません。

だから私たちは、日本を「売る場所」ではなく「基準をつくる場所」として見ています。

――一方で、日本ならではの難しさもあると思います。

三つあります。一つは権利の処理です。日本は肖像権や利用許諾への感度がとても高い。これは制約というより健全なことだと思っています。商用で使えるライセンスの範囲をはっきりさせることを優先しています。
具体的には、生成物をどこまで商用利用できるのか、肖像やキャラクターをどう扱うのかを、日本の実務に合わせて利用規約側で整理しています。日本法人を置いた理由のひとつが、まさにここです。

二つめがAIっぽさへの抵抗感。日本の視聴者は、映像の違和感に対する感度が世界的に見ても高いと感じます。海外なら許される粗さが、日本では一気に信頼を失う。正直、逆風です。ただ裏を返せば、日本で通用する品質をつくれれば世界でも通用する。Film Studioのポートレート強化のような機能を重視しているのは、そういう理由もあります。

三つ目は日本語の自然さですね。翻訳調のナレーションは、日本の視聴者に一瞬で見抜かれます。ここは日本法人としていちばん力を入れているところです。

――日本では、どういった相手にアプローチされていますか。

立ち上げの時期はEC事業者さんとの接点から入りました。ただ、いまお問い合わせをいただくのは広告制作会社さん、映像制作会社さん、それからIPをお持ちの事業者さんが増えています。

CanvasもFilm Studioも、正直なところ映像の文法を知っている方ほど価値がわかるプロダクトなんです。「カメラを寄せる」「芝居を抑える」という言葉が通じる相手のほうが、圧倒的に早く使いこなされます。

制作会社の仕事はどう変わるのか

――私たちのような制作会社にとって切実な質問をさせてください。AI映像が普及したとき、制作会社やクリエイターの仕事はどうなると思いますか。

正直に申し上げると、「安く、早く、たくさん」を価値にしてきた仕事は厳しくなると思います。そこはAIがいちばん得意な領域なので。

ただ、Film Studioをつくった過程そのものが、答えの一部になっている気がしています。

私たちも最初は、生成の品質さえ上がればいいと思っていたんです。でも自分たちで映像をつくってみたら、足りないのは品質ではなく判断の置き場所だとわかった。カメラをどこに置くか。芝居をどこまで抑えるか。色をどちらに転ばせるか。これはモデルが決められることじゃない。決めるのは人間だという前提に立ったから、機能をあれだけ細かく分けたんです。

つまり私たちは、演出という職能が残るほうに賭けてプロダクトを設計している。そういうことになります。

――最後に、TOPVIEWが目指している未来像を聞かせてください。

誰でも一瞬で動画がつくれる世界、ではありません。そこは誤解されたくないところです。

私たちが減らしたいのは、作り手が本質以外のことに使っている時間です。プロンプトの書き方を覚える時間、思ったものが出てこなくてやり直す時間、ツールを行き来する時間。そういうものを削って、「何を伝えたいか」「どう感じてほしいか」を考える時間に振り替えたい。

映像制作って、本来はそこがいちばん面白いはずなんです。技術的な制約に頭を使っているうちは、その面白さにたどり着けない。

生成する前にショットを組み立てる、というのは、結局そういうことだと思っています。決めるべきことを、決めるべき順番で決められるようにする。それだけです。

まとめ:TOPVIEWとは何か

今回のインタビューを通じて見えてきたTOPVIEWの本質を、改めて整理します。

TOPVIEWは、単一のAI動画生成ツールではなく、外部の最先端モデルを束ね、その上に「演出のための制御」を載せたAI映像制作の環境です。自社で基盤モデルは開発せず、新しいモデルが出るたびに最速で搭載し、それを実務で使える形に落とし込むことに資源を集中させています。

中核になるのが、AI エージェントと対話しながら作品全体を組み立てる Canvas と、一カットの演出に踏み込む Film Studio です。役者の表情、カメラ設定、カメラワーク、色。プロンプト一本に押し込まれていた判断を分解し、監督が現場で下している判断の単位に近づけている点が特徴といえます。気に入らない結果が「やり直し」ではなく「調整」で済む。3D ショットコンポーザーのように、生成の前に構図を確定させる機能もその発想の延長にあります。

出発点はコマース・EC の商品動画づくりでしたが、機能とモデルの進化にともなって、映画やショートドラマの制作を目的とするユーザーが増えているという。エピソード型のショートドラマを制作するDrama Studioも展開しており、同社は社内に制作スタジオを持つコンテンツ制作者としての顔も持ちます。ツールをつくる側と、それを使って作品をつくる側の両方に立っていることが、機能設計に反映されています。

そしてその背景にあるのは、「モデルの性能はいずれ横並びになる。そのとき問われるのは、思った通りに出せるかどうかだ」という読みです。生成の精度そのものではなく、作り手の判断をどこまで受け止められるかで選ばれる時代が来る。同社はそこに賭けてプロダクトを設計しています。

2026年2月には日本法人TOPVIEW JAPANを設立。日本を「売る場所」ではなく「品質の基準をつくる場所」と位置づけ、オフラインでのコミュニティづくりを進めている段階です。

AIで映像をつくる時代において重要なのは、ツールそのものの性能だけではありません。そのツールを使いこなし、構成・演出・トーンを設計し、作品として成立させるプロフェッショナルの存在です。

監修者:株式会社スムージースタジオ 弘田 朗(ひろた たから)
監修者
株式会社スムージースタジオ
弘田 朗(ひろた たから)
AI動画クリエイター/DXエンジニアとして、広告代理店や事業会社の動画制作・デジタル変革を多数支援。
AIを活用した動画生成やクリエイティブ最適化の実務経験を持ち、スピードと品質を両立させた制作フロー構築を得意とする。特に広告配信におけるABテスト用動画の生成や、ブランド一貫性を担保したAI活用の設計に定評がある。